来栖恭太郎は満月に嗤う
「そういう訳で」

アリカの瞳に、氷の如き光が宿る。

「下等な吸血鬼が貴族を騙った罪をこの場で償いなさいな。そうね…」

フリルだらけのスカートをヒョイと摘み上げ、彼女はスラリとした白い脚を露出させた。

「跪いて脚をお舐めなさい。そうすれば私の下僕に成り下がる程度のお仕置きで許してあげない事もないわ」

頬を赤らめ、陶酔し切った表情で上気したままアリカが告げる。

しかし。

「そら、リルチェッタにクレオ」

俺はアリカには目もくれず、地面に横たわる使用人たちの脇腹を脚で小突いた。

「いつまで寝転がっているつもりだ。お前らが暴れたお陰で、庭園が荒れ放題だ。さっさと片付けを始めろ」

「ちょっと、聞いているの来栖恭太郎。私の脚を…」

「クレオは穴だらけになった芝を埋めて再び刈り込め。リルチェッタは横倒しになった植木を植え直して剪定だ」

「この私を無視する気?高貴で気高いこの私が、お前如き汚らわしい吸血鬼に語りかけて…」

「無論ライガン、お前も働くのだ。お前は飛散した石畳や噴水の破片を片付けろ。番犬だからと甘やかしはしないぞ」

< 129 / 162 >

この作品をシェア

pagetop