来栖恭太郎は満月に嗤う
リルチェッタとアリカは同い年だ。

それを、何故リルチェッタが『姉様』などと呼ばなければならないのかは理解に苦しむ。

余程女王様を気取りたいらしい。

…それはともかく、悪魔の名門ローゼンハイム家の令嬢アリカが我が屋敷に住むようになって、一週間が経過していた。

彼女は自分の屋敷に帰らない。

帰れないのだ。

別に俺の吸血行為による呪縛だとか、そういう理由ではない。

吸血行為による『虜』というのは、そういうものではない。

魔術や呪術による拘束は一切働かない。

彼女を縛り付けているのは、吸血行為の際に与えられた甘美なまでの刺激。

体があの快楽を忘れないという奴だった。

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