来栖恭太郎は満月に嗤う
彼女がローゼンハイムという高貴な家柄でありながら、彼女言うところの『血を吸うしか能のない蝙蝠の親玉如き』に敗北を喫したというのも理由の一因である。

アリカの事だ。

自分の屋敷でも、使用人や弟妹、果ては両親に対しても横柄で横暴で傲慢な態度で振る舞っていたのだろう。

俺の所に出向く際にも、『生意気な吸血鬼の首をぶら下げて帰ってくる』などと大きな口を叩いて門を潜って来たに違いない。

それが、首をぶら下げるどころか敗北し、しかも負け犬の証である吸血痕を首筋に刻印され、ましてや抗う事なく快楽にされるがままだったというのだ。

恥ずかしくておめおめと屋敷にも戻れまい。

どの面下げて帰っていけるというのか。

せめて俺への屈辱を晴らし、足元に跪かせでもしなければ、二度とローゼンハイムの門は潜れまい。

アリカもまた、俺に復讐を誓った一人となったのだ。

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