来栖恭太郎は満月に嗤う
小声で話しているつもりなのだろうが…。

生憎だったなクレオ、俺は耳が良くてな。

彼らの会話は、室内の俺には筒抜けだった。

「来栖に何か恨みを持っているのは分かるが…あまり彼の前で態度に出してはいけません」

「え…」

「彼は貴女が思っている以上に残忍で容赦がない…その日の気分次第で悪戯に命を奪うような男です…挑発や反抗的な態度は、貴女にとって何の得にもならない」

「……」

「悪い事は言わない。来栖の前では…演技でいい、従順でいる事です。どんなに屈辱であろうと。そして出来る事ならば…隙を見計らってこの屋敷を出て行きなさい。貴女のような美しい少女が、いる場所ではないのですよ?」

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