来栖恭太郎は満月に嗤う
フン…。

聞こえていないと思って、好きな事を言ってくれる。

木乃伊男風情が善人ぶって。

虫酸が走りそうなクレオの発言に、今すぐ部屋を出て行って処罰の一つもくれてやってもよかったのだが。

「いえ…」

直後に聞こえてきたリルチェッタの返答に、俺は足を止めた。

「ご忠告は感謝いたしますが…出て行く事だけは聞けません…」

「…貴女という人は…」

深い溜息をつくクレオ。

返事の代わりに、笑みを浮かべるリルチェッタの気配があった。

俺の前では決して見せる事のない、リルチェッタの可憐な笑顔。

「私はもう、残りの人生を来栖恭太郎への復讐に捧げると誓ったのです。ですが…クレオさん、貴方のお心遣いには、感謝しています」

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