来栖恭太郎は満月に嗤う
今は精一杯抗わせる。

時には隙を見せて、決して敵わない相手ではないと希望すら感じさせる。

希望を持てば持つほど、それが叶わぬ夢だったと分かった時の絶望が、より甘美なものとなる。

全てに絶望し、落胆した者の顔ほど、美味なものはない。

俺が何より好物とするものだ。

それを熟成させる為に、先程の扉の向こうのやり取りのような、僅かな無礼程度は見逃してやる。

思い通りにならない事ほど腹立たしい事はないが、それらが全て俺の自由になるようになった時の快感は、えもいわれぬものに違いないからな…。

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