来栖恭太郎は満月に嗤う
蹴りをかわし、対峙する狼。

俺もまた、馬上から狼に視線を送る。

…こちらの馬は二人乗せたまま。

しかも俺が操り、馬が動く分、若干の遅れが出てしまう。

「気に入らんな」

俺は一言呟き。

「え…!?」

リルチェッタが声を上げる。

俺は一人、馬から下りた。

「この俺に地面を踏ませるとは…この無礼の代償、払う覚悟は出来ているのだろうな、犬コロ」

本当に、俺の言葉を理解しているのかもしれない。

狼は気に入らなげに牙を剥き出しにして、小さく唸った。

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