来栖恭太郎は満月に嗤う
睨み合う狼と俺。

だがこちらは丸腰だ。

猟銃も、ナイフの一本すら持ち合わせてはいない。

いや…。

「これがあったか」

俺は手にした乗馬用の鞭を眺める。

「生意気だが、俺の操る馬の蹴りを二度もかわしたその動きと知恵は気に入った。来い犬コロ。貴様を我が屋敷の番犬にしてやる」

「ば、番犬って、それは狼ですよ!?」

馬上からリルチェッタが叫ぶが。

「くくっ…」

俺はニヤリと残忍な笑みを浮かべた。

「どちらも同じだ。俺がたっぷりと調教して、従順な飼い狗に躾けてやる」

『飼い狗』

その言葉が気に入らなかったのか。

狼はそれまでよりも俊敏な動きで俺に飛びかかってくる!

が。

「ノロマが」

俺はそれよりも更に速く、鞭の一閃で狼を打ちのめした!

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