来栖恭太郎は満月に嗤う
「まぁいい」

俺は血塗れになってグッタリとしている狼を、投げるように愛馬の背に載せる。

返り血が俺のスーツに飛び散っていなければいいが…。

全く、汚らしいケダモノだ。

嫌悪感を露わにした表情を浮かべ、俺は馬の背にまたがる。

「リルチェッタ、今日からその犬コロを番犬として屋敷で飼う。その犬コロに名前をくれてやれ。お前の仕事だ」

そう言って俺は馬の腹を軽く蹴った。

走り出す愛馬。

その背中で、苦しそうではあるものの、確かに狼はまだ息をしていた。

瀕死ではあるが、まだ生きているらしい。

と。

「…ライガン」

ふと、リルチェッタが呟いた。

「ライガンです」

「ほぅ」

俺は彼女の顔を見た。

「もう名前を決めたのか?」

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