来栖恭太郎は満月に嗤う
クレオの表情が強張るのが、包帯の上からでも分かった。

「リルチェッタ」

俺に名を呼ばれ、彼女はビクリと身を震わせる。

「立って壁に両手をつけ。足は肩幅に開け」

「…っ…」

俺の言葉に、リルチェッタの震えが大きくなる。

脅えきった瞳で俺を見上げ、哀願する。

そこに、俺を両親の仇と憎悪する気丈ないつもの眼差しはない。

許しを乞い、恐れ、脅え、竦み上がる少女のそれでしかなかった。

…そんな表情が、余計に俺の嗜虐心を掻き立てるとも知らず。

「どうした、早くしろリルチェッタ。それとも…この場で四つん這いになって、背中ではなく尻を鞭打たれる方が望みか?」

「っっっっ!」

ギクシャクと硬い動きで、それでも精一杯急いで。

リルチェッタは立ち上がり、壁に両手をついた。

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