来栖恭太郎は満月に嗤う
リルチェッタ・スゴウ。

この娘の名前を思い出したのは、今しがただ。

一年ほど前だったか。

この娘を連れ、三人で屋敷にやってきた者達がいた。

その者達は、通り良く言えば殺し屋だった。

俺もある筋では名の知られた人物だ。

大金を積んででも首をとりたいという者はゴマンといたし、仕留めれば名を上げられると探し求める者も数多い。

そういう連中のうち、稀にこの屋敷まで辿り着く者がやって来る。

…殺してやった。

父を屠り、母を屠り、我が子の目の前で血の海に沈めてやった。

そして最後に娘をじっくり嬲ってやろうとした時、まだ息のあった父親が娘を逃がしたのだ。

僅かな命の灯と引き換えに。

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