来栖恭太郎は満月に嗤う
これ以上やっては、只の人間では命も危ういか。

もう少し楽しんでいたかったが、死なせてしまっては元も子もない。

「このくらいにしておいてやろう」

床に突っ伏すリルチェッタのそばに、血に塗れた鞭を投げ落とす。

「よく覚えておけリルチェッタ。俺は失態は許さんぞ。仕置きが嫌ならば、細心の注意を払う事だな」

心にもない事を言い放って、その場を後にする。

内心では、もっと失態を犯せ、俺に悲鳴を楽しませろと嘲笑しながら。

…あの分ならば、今夜は傷が元で熱を出して寝込むだろう。

明日は休ませてやるとするか。

俺とてそれほど鬼ではない。

今後の楽しみの為に、慈悲をくれてやる優しさ程度は持ち合わせているのだ…。

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