来栖恭太郎は満月に嗤う
瀕死に追い詰められるほどの調教を、俺自身から受けたというのに。

野生としての誇りか、それとも畜生ならではの知能の低さか。

とにかくライガンは、俺に対して服従しようとはしない。

いつまでも俺に牙を剥き、隙あらば食い掛かろうとさえする。

その癖、俺がたとえ二階からでも威嚇の視線を投げかけると。

「……!」

脅えたように吠えるのをやめ、またヒタヒタと敷地内を歩き始める。

愚かな犬コロだ。

反逆した所で、俺に敵う筈もないというのに。

所詮背後から襲いかかるしかできない臆病者なのだろう。

こちらが手が届かない時にしか、威勢の良さを発揮する事ができない。

まぁ仕方ないか。

本能で生きている動物だ。

先日の調教以来、俺との絶対的な力の差を思い知らされている。

本心では、俺には勝てぬと理解しているのだろう。

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