来栖恭太郎は満月に嗤う
念には念を入れておいた。

実はライガンには、昨夜餌を与えていない。

空腹の為、普段から気性の荒いライガンが更に獰猛になっている筈だ。

「さぁ…」

俺は小さく呟く。

「このままライガンにいいように噛み殺されるか?それとも本性を露わにして、ライガンを力ずくで調教するか?」

これはいい見世物だ。

一歩間違えればリルチェッタの命が危ういというのに、俺はそんな事すら気にも留めずに眼下の光景に見入っていた。

リルチェッタが本性を見せずにライガンに食い殺されようと、逆にライガンがリルチェッタによってねじ伏せられようと、俺にはどっちに転んでもいい結末。

この見世物は、俺にとって何一つ損のない余興に過ぎなかった。

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