来栖恭太郎は満月に嗤う
「い…いやぁあぁああっ!」

気も狂わんばかりの恐怖、戦慄。

リルチェッタはもつれる足を何とか操って、再び庭園内を逃走した。

逃げる彼女を追うライガン。

「……」

その光景を見ながら、俺はいささか拍子抜けしていた。

まるで普通の娘だ。

あの鞭打ちの罰から一夜で立ち直ったリルチェッタ。

或いは彼女は…と、憶測を巡らせていたのだ。

彼女が俺の予想通りならば、多少は歯応えがあると踏んでいたのだが…。

ライガン程度に無抵抗に追い回されている所を見る限り、残念ながら俺の読みは外れていたようだ。

このまま見ていても、リルチェッタがライガンに狩られるという、つまらない結末しか待ってはいないだろう。

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