来栖恭太郎は満月に嗤う
退く気はない。

ライガンの態度を見てそれを悟ったのだろう。

「そう…」

リルチェッタは悲しげに睫毛を伏せた。

「私が敵意を抱いているのは来栖恭太郎だけ…だから例え貴方がlycosだとしても、私は敵対する気はなかったのだけれど…」

リルチェッタの言葉に、俺は眉を潜める。

lycosとは何だ?

どうやらギリシャ語のようだが…生憎と俺はギリシャ語はわからない。

勿論、ライガンも同様だ。

リルチェッタの言葉には耳を貸さない。

彼の頭の中にあるのは、目の前の美しい獲物をどう食らってやるかという、その一点のみ。

躊躇も逡巡もなく、高い跳躍からの牙が、リルチェッタの身に降りかかる!

< 76 / 162 >

この作品をシェア

pagetop