来栖恭太郎は満月に嗤う
終わった。

ライガンの跳躍の軌道は、リルチェッタの喉笛。

急所を一咬みして息の根を止め、その後ゆっくりと肉を食らう。

肉食獣の典型的な仕留め方だ。

凄惨な、しかし俺にとっては見慣れたつまらない結末。

退屈げに俺が溜息をついた、その矢先だった。

「!!!!!!?」

突然敷地内に響く、鈍い衝撃音。

まるで巨大な岩が崩落したかのような。

或いは大規模な土砂崩れでも発生したような。

重く、それでいて生身同士がぶつかり合うような打撃音が耳に届いた。

…眼下の光景は、この俺でさえ少々驚愕するものだった。

追い詰められていた筈のリルチェッタが、とどめを刺そうと飛びかかってきたライガンを、右拳の一撃で地面に叩き伏せていたのだ。

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