来栖恭太郎は満月に嗤う
クレオが問いかけてくる横では、食器の片付けをするリルチェッタが、どこか不安げな表情を浮かべていた。

先日のように、散歩に同行させられるのではないかと心配しているらしい。

最近では何食わぬ顔をして俺の身の回りの世話をしているリルチェッタだが、やはりそこは両親の仇。

加えて自分自身も苛烈な罰を与えられた経験もある。

俺に対しては嫌悪以外の感情は持ち合わせていない。

共に時間を過ごすなど、苦痛以外の何物でもないのだろう。

「案ずるなリルチェッタ」

薄笑みを浮かべて俺は立ち上がる。

「今宵はお前の同行は許してやろう…命拾いしたな?」

その言葉に、一瞬だけ瞳に憎悪を宿らせるものの。

「…いってらっしゃいませご主人様。お気をつけて」

すぐに能面のような表情に戻り、リルチェッタは恭しく頭を垂れた。

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