来栖恭太郎は満月に嗤う
エントランスを出てすぐの所に、クレオが愛馬を引いてきていた。

今日も俺の愛馬は肌の色艶がよく、毛並みも上々。

ベストコンディションのようだ。

ボトルの管理は誉められないが、こと馬の飼育調教に関しては、クレオは文句のない仕事ぶりを見せる。

彼の母国では馬ではなく、別の動物を足代わりにしていたらしく、種類は違えど飼育調教に関しては慣れている様子だった。

「ではいってくる」

鐙に足をかけ、愛馬にまたがる。

「いってらっしゃいませ、来栖様。お気をつけて」

直立不動で、深々と頭を下げるクレオ。

それを一瞥した後。

「はぁっ!」

俺は馬の腹を蹴り、愛馬を駆けさせた。

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