来栖恭太郎は満月に嗤う
ひとしきり湖面の満月を楽しみ、そろそろ屋敷に引き返そうかとした時だった。

「結構なご身分だな、来栖」

どこからともなく声が聞こえる。

姿はなくとも聞こえてくる、しゃがれた男の声。

声の主は分かっている。

「猟場番風情が主人を呼び捨てとは…貴様こそいいご身分だな、ハルパス」

挑発にも涼やかな…ともすれば逆に挑発を返しているかのような笑みで応える。

案の定。

「いい気になるなよ、来栖」

ハルパスの声に怒気がこもった。

「知っているぞ、来栖。貴様の囲っているリルチェッタとかいう娘…どうやら只の娘ではないようだな…随分と厄介な女を引き入れたものだな」

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