来栖恭太郎は満月に嗤う
「猟場番如きにとやかく言われる筋合いはないがな」

ハルパスの言葉に耳を貸さず、俺は愛馬を転進させようとして。

「!」

そばの木の幹に何かが着弾した事で、動きを止めた。

…弾丸?

となると猟銃か何かか?

いや、弾丸にしては硝煙の匂いがしない。

それにハルパスは、猟銃など使わない。

「如何な貴様とて、クレオとリルチェッタの二人と生活を共にしていれば、いずれは寝首を掻き切られるかもしれん。俺としてはそれは困るのだ。来栖恭太郎、貴様の首はこの俺がとりたいのだからな」

嘲笑含みのハルパスの言葉。

それを。

「くくっ」

俺は逆に嘲笑で返してやる。

「俺の首をとる?面白いジョークだ。わざわざ南米から俺の屋敷にまで来て殺し合いを挑んだ挙句、命をとられそうになって『お前の使用人としてこき使われてもいいから、殺さないでくれ』と這い蹲って懇願した奴の言う事か」

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