来栖恭太郎は満月に嗤う
怒りに赤くなっていたハルパスの顔が、見る間に蒼白となる。

「なぜだ!?以前戦った時もそうだった!急所という急所を穿たれながら、貴様は何故血の一滴も流さない!?」

「それがわからぬのは」

水流によって貫かれ、穴だらけとなった俺の肉体。

しかしその傷口からは一切の流血がもたらされる事はない。

それどころか肉体は、まるで黒い霧が霧散していくかのように徐々に形を留めなくなり、やがて気体のように宙を漂った。

黒雲のような、或いは黒煙のような形状。

かつて来栖恭太郎の肉体だった、その黒い霧は、意思を持つかのように狼狽するハルパスに襲い掛かる!

「お前が三流の人外に他ならぬからよ、ハルパス」

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