★あいつは教育係☆
「僕は何もしていないぞー。」

嘘つき!手とか触ってきたじゃんっ!

「ですが、伊藤さんは怯えているようですが?」
信次は、冷静に聞き返した。

「はいはーい。俺も見たよー。君が綾菜ちゃんにしてた事!」
和希さんが割り込んできた。

「僕も......見ました。」 徹さん......

「うん。俺も。」
アレンさんも......

「まだ、何もしていないとおっしゃいますか?」
信次が聞く。

「っ......もう二度と来ないからな!」
男はそう言い捨てて、店を出て行った。

......
パチパチパチ......
拍手がまき起こった。

「お嬢様方、ご迷惑をおかけして申し訳御座いませんでした。」

アレン達は、店内にいるお客様に謝罪し、それぞれ仕事に戻って行った。

私はと言うと......

信次に裏へ連れて行かれた。



「......ありがと。」
私は小声でお礼を言った。

「は?何?聞こえない。」

空気読んでくれよ!

「だから......助けてくれてありがとうって言ってるの!」

......なんか恥ずかしいんだけど......

ゴンッ。

えっ?今はたかれた?
なんで?お礼言っただけじゃん!

信次は反対側を向いて

「別に......」
とだけ言った。

もしかして......

「照れてる?」

ゴンッ。
またはたかれた......
はいはい。今のは私が悪いですよー。

軽く咳払いをし

「俺は先に戻っているから、落ち着いたら出て来いよ?」

ポンッと軽く私の頭をはたいて、信次は出て行った。

やっぱり

良い奴なのかな?

口は悪いけどさっ。


私の胸の中に、あいつに対して、マイナスじゃない、何か......別の感情が芽生え始めていた事に、私はまだ気付いていなかった。
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