★あいつは教育係☆
*・*信次*・*

「なぁ。綾菜ちゃん、ちょっとやばくない?」

最初に異変に気付いたのは、アレンさんだった。

綾菜の行った3番テーブルを見ると、確かに客の男に腕を掴まれている。

「俺、助けに行ってくる。」

向かおうとするアレンさんを引き止め

「いえ、俺が行きます。」

こうして、俺は3番テーブルへと向かった。



二人の会話が聞こえる。

「ご......ご主人様!おやめ下さい!」

「綾菜ちゃんは今、僕のメイドだろ?サービスしてよー。」

サービスって......キャバクラじゃねーんだぞ?
馬鹿じゃねーのか?

ったく、しょうがねぇな。

グイッ。

俺は綾菜を引っ張って、俺の方へと引き寄せた。

腕の中にすっぽりと収まる。

綾菜は震えていた。

相当恐かったんだな......

「申し訳御座いませんが、お引き取り下さい。」

俺は男に向かって冷たく言い放った。

「俺は何もしていない!」

......しらをきんのかよ。
全く迷惑な客だよな。

綾菜は俺の腕の中で体を強張らせている。

「でも、凄く怯えているようですが?」

男がまた何かを言おうとした時

「俺も見たよー。」

「僕も......」

「俺も。」
和希さん達が助太刀に入ってきた。

店内にいる人達も、やってたよねと話している。

「これでもまだ、しらをきるおつもりですか?」

もう言い逃れは出来ないのだと思ったのだろう。

男は二度と来るかと言い捨てて、店を出ていった。

......二度と来るな。

パチパチパチ......
店内から拍手がまき起こる。
まぁ。良い事したもんな。

和希さん達はお客様に謝罪をし、仕事に戻った。

俺は震えている綾菜の腕を掴み、裏へ連れて行った。
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