★あいつは教育係☆
*・*信次*・*

「綾菜です。よろしくお願い致します!」

......こいつ、絶対に雅哉さん目当てで入ってきたな。
さっきから、ずっと雅哉さんしか見てねぇし。

ったく、メイド募集してから何人目だよ。

オーナーが俺の肩に手を置いて、伊藤綾菜に紹介してきた。

「......」
挨拶なんかしてやるか。
どうせ、お前も前の奴等と同じなんだろ?

頭も下げないで、ぶっきらぼうにしていると、伊藤綾菜はあからさまに嫌な顔をしていた。

まぁ、シカトしてたけど。

その後、雅哉さんの紹介になった途端、満面の笑みで挨拶し始めて......

「なんかムカつく。」
「ん?信次、今何か言った?」
無意識のうちに言葉に出していたらしい。
先輩のアレンさんが尋ねてきた。

「いえ、何でもないです。」

全員の紹介が終わって、オーナーがあいつに教育係を付けると言ったから、俺はオーナーにだけ分かるように、合図した。

教育係は俺がやる。

あいつは、雅哉さんじゃなくてがっかりしたみたいだけど。

名残惜しそうに雅哉さんを見ている伊藤綾菜にイライラして、頬を思いっきり抓ってやった。

「馬鹿はこっち。」
俺はそれだけ言って、先に教育室に向かった。

後ろで、あいつが何かいっているけど、完全無視。

本棚から、分厚いノートを取り出して、綾菜に渡した。

「この店のメニューが書いてある。明日までに覚えてこい。テストするから。」

「それはあまりにも無理があるんじゃないですか?」
にへらっと、愛想笑いを浮かべる綾菜に俺は

「だったら辞めろ!」
と言い放った。

綾菜の方も我慢の限界だったらしく、色々文句を言い始めた。
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