翡翠の姫君
ふと顔を上げると、そこには一人の男性。
服装や腰にある剣からして、どこかの貴族か城の者みたいだ。
「あの…………?」
「…エミリア殿ですね?」
低い声で男性が言った。
なんで知ってるの…?
「そうですけど…何か?」
私は少し怖くなって、思わず体に力がはいる。
「私、シルク王国のメルス城でセディ王子の側近に仕えている者です。」
"シルク国"
その名前に私は頭が真っ白になった。
同時に甦るあの時の記憶。
そんな私を知ってか知らずか、無表情で淡々と話していく。
「そのセディ王子に貴女を連れてこいと言われましてね。
すみませんが…私と一緒に来ていただけますか?
抵抗しないなら、決して手荒な真似はしません。」
城に…行く?
…シルク国に行くの?