翡翠の姫君


そう思っても、体は言うことをきかなくて息が荒くなる。


私は、震える手でドアを開いた。



ガチャッと響くドアの音。




「…いない?」



いつもの椅子に座っていないあの人。



少し安心し、深く息をついた。




―その瞬間



「…エミリア」




低い重い、声が聞こえた。


暗い部屋の奥から、ゆっくりとこちらに近づいてくる人影。



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