ソプラノ
病院
「診断結果ですが、肺炎ですね。少し悪化しているようなので入院、という形でよろしいですか?」





―最近、どうも身体の調子が悪いと思い、病院に診察に来た俺は、母さんと一緒に驚いた。


・・・肺炎って。



俺も母さんも風邪だと思ってたし、まさか肺炎に犯されているなんて思いもしなかった。





しかも入院とか、めんどくせぇな。






母さんは、書類やらカルテやらを抱えた看護師とカウンターで入院手続きをし、「荷物持って来ないといけないわね」と言い、帰っていった。





あーも最悪だよ。




来週からテストだっつの。





俺はぶつぶつ文句を言いながら、病室へ案内してくれている看護師の後をついて歩く。







「早川弾さんね。ここが病室になります。ベットのシーツや枕カバーは・・・・・」




俺は看護師の説明を右から左へ聞き流し、「どうも」と短くあいさつをして病室に入った。




―真っ白。




―朝眩しいだろうな。こんだけ白くっちゃ・・・・。



病室は閉め切っていただけ蒸し暑く、俺はTシャツを軽くまくった。




窓に近づき扉を開ける。



―キイィッ


軋むような音と、窓の桟にたまっていた小さなホコリが外に散った。





―少しだけ肌寒い風が、俺の頬を撫でた。










―――――――――――――――――



「?」


ベッドに腰掛けていた俺。

ふいに何かが聞こえた気がして窓に近付いた。



窓から顔をだし、耳を澄ます。




・・・・何も聞こえない。




「なんだ」




ため息と共に、桜の花びらと温い風が病室に入ってくる。




~♪~~~♪♪~♪~~~♪~―・・・・



緩い風の音と、澄んだようなメロディーが聴こえた。



俺は再度耳を澄ます。






聴こえる、確かに・・・何かの歌が。




―それは透き通るような、きれいな声だった。








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