ソプラノ
―1時間くらい経っただろうか。






バタバタとうるさい足音が聞こえる。





「弾っ!やった!やったよ!・・・・っはぁゴホッ!」



由希が再び病室にやってきた。





「はぁ?何がやったの?」







俺は雑誌を読みながら由希に問いかけた。






「きょ、許可出た~!!はぁ・・・はぁ・・・・苦じぃ。」




由希はよろよろと丸椅子に腰掛けた。




「まじかよ・・・てゆーか行くのめんどい・・・」









―俺の何気ない一言に、由希は切れた。





「はぁっ!?ありえないから!!女子にあんだけ走らせといてなんなの!?」






由希はまたもや俺の雑誌を奪い取ると、床に叩き付けた。





「何怒ってんだ?ここ病院、静かにしろって。祭りに俺は必要なんですかって話じゃねぇの?」






俺はベッドから下り、雑誌を拾い上げるとパンッと音を立て閉じた。








―由希を見ると、なぜか泣いている。





「ちょ?おい、由希?」








俺はどうしていいか分からず、戸惑った。







「何でって・・・・理由がなきゃ駄目なの!?理由がなきゃ弾と一緒にいちゃいけないの?理由がなきゃ・・・・弾を好きでいちゃだめなの!?」





「は・・・・い?」






由希はキッと俺を睨むと「祭り来なかったら弾の秘密みんなに3つ話してやる!」と言い放ち、走って出て行った。





―ちょっと待て、あいつは子供か!



―あれ?何だこれ。



ポカーンとしたままの口を閉じ、由希の言った言葉を再度頭にめぐらせる。








『弾を好きでいちゃだめなの!?』





駄目じゃねーけど、えっ?






由希って俺が好きだったのか?











俺は混乱という渦に巻き込まれ、その日を終えたのだった。









< 11 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop