ソプラノ
しばらく耳を澄まし、聴いてみる。






ふっと歌が途切れ、次に聞こえてきたのは、


「涼ちゃんはその歌好きねぇ?向かいのおばあさん、“涼ちゃんの声は綺麗だねぇ”って言ってたわ」


「うん好き~お姉ちゃんも好きなんだ、この歌」


という、看護師と歌の主の声。




会話をしばらく聞いていたら、何故か眠くなってきた。




俺はベッドに横になると、ウトウトと目を閉じた。












どれくらい経っただろう、勢いのある「ガラッ」という音で目を覚ます。



音のした方に顔を向けると、見覚えのある4人の姿。




「大丈夫か?」

「弾、無事!?」

その中の2人が、俺のベッドに腰掛けて顔を近付けてくる。



―夏目 陸と、倉橋 由希だ。




「何?」




「何、じゃねーしっ!見舞い!!」




陸は歯を見せて笑うと、俺の頭を軽く突いた。





「やめろ」



寝起きで不機嫌な俺が、低い声でそう言うと、橘 俊介と安西 柚がおどけた口調で、



「まぁ、まぁ、落ち着きぃ」

「まぁ、まぁ、落ち着こうよ」



と笑った。





―まぁ、見舞いに来てもらって、この態度はねぇか・・・。



「ん、悪い悪い・・・」




と、俺は出そうなあくびを抑えながら言う。





「今日は帰るけど、また来るかんなぁ!」

「お前今月テストだって」

「やべぇ!勉強してねぇえ!!」

「んじゃ、テスト終わったらまた来るね」



そう言いながら、4人は病室を出て行った。






―テストか。



―・・・あれ?俺の場合どうなんだよ、担任?成績落とすんじゃねぇぞマジで。





いろんな考えが頭をぐるぐると回り、ついには担任に怒りの矛先を向ける。






「あーもうどうでもいいや・・・」




俺はふさぎ込むようにして、枕に顔を埋めた。









―外はすっかり日が落ち、空には星が輝いていた。























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