ソプラノ
「さー弾!遠慮せずどんどん食え!」





時計が12時を回り、昼。








父さんは、料理を俺の皿に次々に盛っていく。




「こんなに食えねぇ」



「お前細いんだから食わないと、遠慮してんじゃねぇぞ?」




遠慮するどころか、全く人の話を聞かない父さん。





―話を聞け!








「弾は退院したわけじゃないのよ!あんまり食べると身体に悪いわ!」




母さんは未だに俺の皿に、料理を盛っている父さんの箸を奪い取った。






「そうだったなぁ」





父さんは急に大人しくなった。






「子供みてぇだぞ父さん」




俺は父さんに笑いかけると、箸を勧めた。





父さんが恥ずかしそうに笑い、母さんも笑って。






―あぁ、俺は“家族なんだ”って改めて思った。





< 31 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop