ソプラノ
「あの・・・」




「はい?」







看護師は俺に顔を向けるとにこっと笑った。



「・・・誰か歌?歌ってる?」




看護師は一瞬考えると、



「あぁ!!涼ちゃんのことかな?きれいな声でしょ?」



と自慢げに言う。



「涼」と俺の担当看護師は一緒だった。



担当の人は風間 凛さん。



若いのに、しっかりしていて、とても優しい人だ。








「涼ちゃんは入退院の繰り返しでね」









「涼」の歳は16、友達は中学で離れ、あまり人が見舞いに来ない。



音楽がとても好きで、あの“ソプラノ”の声が自慢なんだ、と、凛さんは教えてくれた。




いつも聴こえる歌は綺麗で、澄んでいた。




―でもその反面、どこか寂しげなメロディーに聴こえたのは、俺だけだろうか・・。








「涼」の歌声は毎日聴こえる。




かと言って、雨の日は聴こえない。


―当たり前だけど。



―「涼」の歌声が聞こえない日は、何故か虚しく感じる。














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