ソプラノ
「涼ってさ」
「涼ちゃん!」



俺の言葉をもみ消すような怒鳴り声が聞こえた。




何だ?




俺は後ろを振り向いた。




―げっ!凛さん!?何か怒ってる!






俺は尋常じゃないほど息を切らせて、目を吊っている凛さんの顔をまじまじと見た。







「診察もしないでどこに行ったと思えば!」



凛さんは、「全く!」と乱暴にベンチに腰を下ろした。





「ご、めんなさい・・・だって、明日から雨続くって・・・だから、えっと・・・」





涼は一生懸命説明を試みる。






「・・・もう、一言言って行くのが常識、でしょ?」




凛さんは呆れたように呟いた。





「うん、ごめんなさい・・・」




涼が頭を下げると、凛さんは「弾くん、涼ちゃんを頼むわね」と、階段を下りていった。






「よろしく頼む、だって」



俺は小さく笑う。



「うん、よろしく頼みます」



涼も笑って。








「あらためて、よろしくな」





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