ソプラノ
俺は、屋上でしばらく涼と話していた。




―どうでもいいような話がとても楽しい話に思えたのはなんでだろうな。





涼は入院生活を話してくれたり、学校のことだったり。






―涼のお姉ちゃんが彼氏に振られ、涼と壁に八つ当たりした話。



―涼の家で飼っている猫と犬の話。



―中学校のハゲた校長の話。



―いつも歌っている曲の歌詞。







俺的には涼の姉ちゃんの話が一番笑えた。




涼と似てるんだろうなぁ。







そんなことを考えているうちに、時計の針は刻々と時を刻んでいく。







時計の針が12を指した時、凛さんが再び屋上へ来、「診察!」と涼に言った。






涼はベンチから腰を上げると、「またね」と言って笑った。





俺は「おーまたな」と言って、軽く手を上げた。








1人になって気付く。




―あぁ、涼と話してると楽しいなって。




この感情がなんなのか、分かっているはずなのに、







―自慢じゃないけど、恋愛経験0なんだよなぁ俺。




告られたことはあっても、自分から告ったことはないし、全く興味が無かったし。





いざ、言葉に出して言ってみたところで、返事が絶対OKってことは無い。







女子が俺に告ったみたいに、振られる確率も高いわけだ。






「あ~なんなんだ?気持ち悪りぃなっ!」







俺は、髪をグシャグシャとかき回した。







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