忘れられない人
今日の凌は、マフラーを買ったせいか、とてもご機嫌のようだった。

「・・・水族館、行きません?」

「えっ、どこの?」

「しながわ・・・なら、近い、ですよね?」

前に行ったときは、電車で・・・だったので、バイクとなると、近いかどうかもよくわからない。

私は地図にめっぽう弱いので、生まれてこのかた22年、東京に住んでいるというのに、道路や地理を言われても、わからないことが多かった。

会社勤めをするようになり、初めてタクシーで自宅に帰るときも、自分の家の場所をうまく説明できなかったくらいだ。

「うーん・・・。まぁ、近いわな。じゃ、行くか。乗って?」

そして私もヘルメットをかぶり、凌の後ろのシートにまたがった。

「では、出発~。」

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