忘れられない人
そっかぁ。

バイクって、こういうとき便利ね。

私がうんうんうなずいている合間に、バイクは2輪専用の駐輪場へ止まった。

「すげー、混んでそう。」

凌がメットをはずし、暑いからか頭を横に振った。

凌のサラサラの黒髪が流れるように動いて、思わず手が出そうになる。

・・・触りたいな。

出会った頃の凌の髪の毛よりもだいぶ伸びて、今は耳よりも長く、軽くロングの域に入っている。

細くて中性的な顔立ちのため、より一層女の人のように見える。

「・・・ナニ?おまえ見すぎ。」

私があんまり見すぎたのか、凌はその大きな手で、

私の顔面をわしづかみにし、ぐいっと横に向かせた。

・・・私、そんなに見てたかなぁ・・・。

直接言われたので、恥ずかしくなった。


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