忘れられない人
驚きながらも、そろそろと顔を上げてみる。

!!!

真上には、水槽に両手をついた凌の姿があった。

なので、私は凌の腕の中にすっぽり入る形でいることになる。

「いいよなぁ、こいつらは・・・。なーんも考えないで泳いでればいいんだもんなぁ・・・。」

凌にとっては、何の気もなしにしていることだろうが、

凌のことが好きな私にとっては、心臓バクバクものだ。

この姿勢に気づいてしまってから、私はカチンコチンに固まったように、身動きがとれないでいた。

「さーてと。もうすぐイルカのショーがはじまるから、移動しようか。」

そう言って凌は、くらげの水槽から離れると、ショーの行うスペースへ向かい、歩き始めた。

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