忘れられない人
「けっこうよくね?東京見物もさ♪」

凌は言いながら、100円を入れて見える双眼鏡にお金を入れ、覗き込んだ。

「おっっっ。ほら、中野きてみ!富士山も見えるよ。」

双眼鏡を覗きながら、手だけで手招きする。

私が近づくと、

「この角度かな。覗いてごらん。見える?」

と、私に代わってくれる。

こんなの覗くの、何年ぶりだろう・・・。

遠足気分で、ちょっとワクワクしながら、双眼鏡を覗き込む。

晴れ渡った空に、くっきり、

富士山が見えていた――――。

それが見えただけでも、なんか得した気分になれた。

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