忘れられない人

「あれ？中野さん、久しぶりだよねぇ～。」

「こんばんは。よろしくお願いします。」

女の教習生は少ないため、名前はすでに覚えられていた。

教官は私の姿を見て、ちょっと驚いたような顔をしていた。

「前は頻繁に来てたのに、急に来なくなったから、みんなで心配してたんだよ。どうした？バイクが怖くなったのかな？」

教官はまず、用意したバイクを端に停めると、私の話を聞きだした。

「・・・そうですね。一度転んでから、バイクに乗るのが怖くなってしまって。」

「そっか・・・。バイクに乗るのは自分だからね。その自分の運転しだいで、良くも悪くもなるからなぁ。」

そして教官は、バイクのエンジンをかけると、自分が最初にまたがり、私に後ろに乗るように指図する。

私は言われるままに、教官の後ろにまたがった。