忘れられない人

「バイクはね、怖い乗り物じゃない。恐々乗っていても、全然楽しくないだろ？まずは、自分の運転を信じて、乗ってあげないと・・・ね。」

教官は、何度も何度も今までに練習したコースを、ゆっくりと説明しながら走行してくれる。

「いつも中野さんを見ていて、僕が思ったのは、怖がりながら運転してるなって感じたんだよね。背をピンと伸ばして、ガッチガチに緊張しながらバイクにまたがってる。そんな運転の仕方じゃ、うまくアクセルを回せるはずがない。」

・・・そうは言われても。

アクセルの舵加減で、一気にスピードが出たりするんだもん。

その加減がよくわからないので、いつもヒヤヒヤしながら運転している。

それも教官にはお見通しだった・・・ということだ。

「だからスピードも出せなければ、ギアを入れるのも遅くなる。」

教官は直線道路に差し掛かると、徐々にスピードをあげていく。