忘れられない人
「ここは60キロまで出さなくちゃいけない。中野さんは40キロそこそこしか出てないだろ?」

「はい・・・。」

「スピードを出すことも怖いかもしれないけれど、ここでちゃんと練習しておかないと、外に出たら、みんなもっとスピードは出すし、障害も多いからね。」

教官は笑顔でグゥンとスピードをあげたあと、一気にブレーキを踏んで急制動した。

「大丈夫。ちゃんとブレーキを踏めば、止まってくれるから。自分の運転を信じて、楽しく乗りなさい。」

そのあと、バイクを明け渡されて、私は久しぶりに車体にまたがった。

なつかしい重量感。

この教官のおかげで、少し怖いと思った気持ちは和らいでいた。


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