忘れられない人
「遅れてごめん。仕事が長引いちゃって。はじめまして、藤咲凌(ふじさきりょう)と言います。」

そう言って私の目の前に現われた彼は、

色がとても白くて、

一瞬、女の人のようだった。

しかしよく見ると、病的に細いながらも背は高いし。

やけにゴツゴツしているし。

声も低いしで。

間違いなく男の人だった。

しかも、私が大好きなバンドのベースの人に似てる・・・。

恋に落ちるまでに、時間はかからなかった。

それまで、一目ボレとか信じなかった私だが、

このときばかりは、それに自分がどっぷり浸かってしまっていた。

「おぅおぅ、おせーよ藤咲。羽田がも〜う、藤咲がくるのを首を長ーくして待ってたぞ(笑)」

私、中野咲妃(なかのさき)と、その親友、羽田みちる(はだみちる)は、短大からのつきあい。

卒業してからも、実家も仕事場も近いので、

こうしてよく、一緒に飲みに行く。

今日は、先日、みちるの高校時代の水泳部の同窓会があったとかで、

その当時憧れていた先輩と、次に会う約束をこじつけたらしく、どうしても私に見せたいというので誘われたのだ。

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