忘れられない人
しかし、待ち合わせの時間を過ぎても、憧れの先輩は現われず。

同じく先輩の佐田湊(さたみなと)と三人で先に飲み始めていた。

そして約束の時間から遅れること一時間。

ようやく本命が現われた。

「先輩、何飲みます?」

「あ、オレウーロン茶で。」

ん?

最初っからウーロン茶ぁ〜?

男の人で、飲み会に来ていてウーロン茶を頼むなんて。

正直、すごいびっくりした。

「あれ、藤咲先輩、お酒飲めないんでしたっけ?」

みちるがすかさず聞き返す。

「いや、そういうわけじゃないんだけど、今日バイクなんだよね。」

そう言われてみて、初めて彼が黒い革ジャンを着ていることに気付く。

「そうそう、咲妃ちゃん。コイツ、めっちゃバイクバカ。バイク好きが昂じて、仕事にまでしちゃってるの。」

「バイクを作る仕事とか?」

「作るというか・・・設計してるんだよね。」

「へぇ、すごーい!私バイクに乗ったこと、一度もないんだ。どんなバイクに乗ってるの?後ろに座って、腰に手を回して、ぎゅーって憧れる!」
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