忘れられない人
そう言って笑顔を向けてくる。
もしかしなくても、この佐田さんの方が縁がありそうだ。
同じ会社に勤めていて、外で知り合うなんてめったにない。
湊は同じ会社に勤めていることがわかると、私に会社内の話をし始めた。
すると自然と私と湊が、
みちると凌とが会話することになり、すっかり二分してしまった。
そのまま、気付けば時間は終電間近に迫っており、慌ててその場はお開きになった。
「咲妃ちゃんは家遠いの?」
「ううん、近いかな。こっから駅三つ分。」
「じゃあ、オレが一番遠いのかぁ。羽田も近いもんな。」
「湊先輩んち、保谷ですもんね。」
笑いながら言うみちるに、
「まぁ、羽田んとこに比べたら田舎だけどさぁ。いっつも帰るの、めんどいんだよね。いいなぁ、藤咲は。バイクでちょちょっとだもんな。」
「だったらオマエもバイクで通勤したら?そのかし、飲んでは帰れないぜ?」
「あ、そりゃあ無理だ。頑張って帰りまぁす。」
と言って、ぺろっと舌を出す湊に、笑いが起きる。
「藤咲さんは?家どこなんですか?」
「オレ?高島平だから近いよ。」
「高島平なの?私、大山なんです。」