忘れられない人

そう言って笑顔を向けてくる。

もしかしなくても、この佐田さんの方が縁がありそうだ。

同じ会社に勤めていて、外で知り合うなんてめったにない。

湊は同じ会社に勤めていることがわかると、私に会社内の話をし始めた。

すると自然と私と湊が、

みちると凌とが会話することになり、すっかり二分してしまった。

そのまま、気付けば時間は終電間近に迫っており、慌ててその場はお開きになった。

「咲妃ちゃんは家遠いの?」

「ううん、近いかな。こっから駅三つ分。」

「じゃあ、オレが一番遠いのかぁ。羽田も近いもんな。」

「湊先輩んち、保谷ですもんね。」

笑いながら言うみちるに、

「まぁ、羽田んとこに比べたら田舎だけどさぁ。いっつも帰るの、めんどいんだよね。いいなぁ、藤咲は。バイクでちょちょっとだもんな。」

「だったらオマエもバイクで通勤したら?そのかし、飲んでは帰れないぜ?」

「あ、そりゃあ無理だ。頑張って帰りまぁす。」

と言って、ぺろっと舌を出す湊に、笑いが起きる。

「藤咲さんは?家どこなんですか?」

「オレ?高島平だから近いよ。」

「高島平なの?私、大山なんです。」
< 6 / 194 >

この作品をシェア

pagetop