忘れられない人
「・・・怖い?」

私の緊張が伝わったのか、凌がシールドを開けて、振り向いた。

「ううん、大丈夫。どこ行くの?」

自分から乗りたいって言っておきながら、怖いなんて言っていられない。

「森林公園。距離的にもちょうどいいかなって。着いたら、散歩しようぜ。」

そして、私を後ろに乗せて、バイクは川越街道を颯爽と走り出した。

走り始めて思ったことは、とても気持ちがいいということだった。

風を全身に受け、車の脇をすり抜けて走るのがとても心地よい。

ただ、信号待ちのときは両脇に止まった車の熱とアスファルトの熱とで、じっとり暑い・・・のと、

車のように会話がままならない・・・というのが、バイクの難点だ。

走っているときに、私が大きな声で話しかけても、

運転している凌にはうまく聞こえていない。

でも、赤信号で止まったときに、頭を近づけて話したり、凌が少し私の方にもたれかかって休んだり・・・というのが、ドキドキしてたまらなかった。

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