忘れられない人
「そぉ?だって、風を直に受けて走るのって気持ちいいじゃない!」

「普通の女の子なら、車の方がいいって言うさ。暑くもなく、寒くもなく、音楽も聞けて、おしゃべりもできる。」

「まぁ、そうだけど・・・。藤咲さんって、彼女にそう言われてきたの?」

「そうだね、車がいいって言われてきたな。オレも女だったらそう思うかも。バイクより車で迎えにきてって(笑)。」

そう言って凌は立ち上がると、

「あともうすぐだから、行くぞ。」

と、またポンっと頭に手を置いた。

これって藤咲さんの癖かなぁ・・・。

誰にでもやってほしくないんですけど。

私は頭に手を置かれる度に、ドキドキしていた。

でも、そんな私の心臓に、凌はこれっぽっちも気づいてない。

罪な男だよ、あなたは・・・。

そう思いながら、メットをかぶり、凌の後ろに飛び乗った。
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