忘れられない人
地元の駅に着くのを待って、私はみちるに電話した。

「もしもし〜。お疲れぇ〜。」

「今日はありがとね。楽しかったー。」

「私も、楽しかったんだけどさ。」

「どさ、で、何?」

電話の向こうでみちるが笑いをこらえているのがうかがえる。

「もーう、わかってるんでしょ!恋に落ちたよ、落ちました。かなりのヒットなんだけど!!」

「やっぱり!咲妃が絶対気に入ると思ってたんだ。咲妃が恋に落ちたんなら、私、協力するし。」

「ちょっと待ってよ。佐田さんじゃなくて、藤咲さんの方なんだけど。みちるはいいの?憧れてたんでしょ?」

「私のことならいいのよ。どうせ私が言ったところで藤咲先輩とつきあえないだろうし。それに、すごく好きだったら、もっと前に告ってるって!咲妃がうまくいったら、私も嬉しいしさ。頑張ってよ。」

・・・本当に?

みちるからそう言われ、私の心は有頂天に達していた。

「だけどね、みちる。私、携帯番号聞けなかった・・・。」

みちるなら知ってるとばかりに言ったのだが、

「そうだよね。そういう雰囲気じゃなかったもんね。実はさぁ・・・、私も携帯番号知らないの。」
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