太陽キャンディ
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「……成海」
昨日はあれから、河井は何も突っ込んでこなかった。
部長に渡すことも、相談することも出来ずに、明日成海に返そう、と密かに誓って。
「どうしたよ」
冷たい声が空気を渡って耳に届いた、今に至る。
「これ、渡せそうにない。……ごめん」
誰の目にも触れぬよう、放課後を狙って成海の教室に来たのはいいけれど。
話すのは、重苦しい会話だけ。
差し出した二つ折りの退部届を、成海はゆっくり受け取る。
「……なんで渡してくんねぇの?」
ため息が混じった成海らしくない声に、俺は戸惑う。