太陽キャンディ






─────

──




「……成海」



昨日はあれから、河井は何も突っ込んでこなかった。






部長に渡すことも、相談することも出来ずに、明日成海に返そう、と密かに誓って。









「どうしたよ」




冷たい声が空気を渡って耳に届いた、今に至る。






「これ、渡せそうにない。……ごめん」






誰の目にも触れぬよう、放課後を狙って成海の教室に来たのはいいけれど。




話すのは、重苦しい会話だけ。







差し出した二つ折りの退部届を、成海はゆっくり受け取る。




「……なんで渡してくんねぇの?」








ため息が混じった成海らしくない声に、俺は戸惑う。
< 18 / 57 >

この作品をシェア

pagetop