太陽キャンディ
目の前では返却された退部届を、成海が見つめている。
そんな成海を見て、何も言えなくなってしまう。
「……成海」
『どうして』
聞きたいことは、それなのに。
口が開かない。
「聞きに来たんだろ? なんでやめんのかって」
いつもより、冷めた声。
グラウンドの中では、それが当たり前だった。
それを注意したり、それに反発したりするのが、当たり前になってきたこの季節に。
「……そうだよ」
成海が、どうして野球をやめるのか。
ただ俺には、成海が理由もなく野球をやめるなんて思わなかったし、
理由は退部届に書いてあるんだろうけど。
やっぱり、成海の口から聞きたくて。