太陽キャンディ
突然の愕然
「……え、やめる?」
「おう」
季節は秋。
つい最近までテレビに映し出されていた甲子園が、やっと落ち着いてきた今日この頃。
沈みかけで沈まない、そんな夕日が眩しい時間帯。
練習は終わったわけではなく、グラウンドではまだバットの音と、野球部独特の声が響いている。
なのに、俺の相方はもう既に制服を着こなしていた。
「ほらよ、頼むな」
そう言いながら目の前に出された『退部届』。
それに今、俺は絶句していた。
「部長に南から渡してくんねぇ? 俺から行くと絶対止められるし、面倒なんだよ」
「…………」
まだ受け取れていない退部届。
出し方はあまりにも軽過ぎだと思ったし、この頼み方もまったく感心を感じない。
こんな微妙な季節に、いきなり退部なんてどうしたものか、と、聞いてやりたかったけれど。
目をパチパチと開け閉じを繰り返すだけ。